新天皇論
小林よしのりさんの漫画は、字ばかりだし、
マンガと言うものでもなく、敬遠してましたが、
このたび、入院の徒然に、
我がブログに似てるからと、差し入れされて一読、
正論別冊14号の標的となった「新天皇論」
よしのりさんが、旺盛極まる素人的好奇心を以て、
バカバカしいのか、ジャーナリスムのエコ贔屓かは判らないが、
すっかり口を閉ざしてしまった男系非拘泥論者の研究をかき集め、
男系絶対論陣に殴り込んだ一書。
思えば、識者会議の長子優先の提言以降、
男系論陣の強固ぶりは、すざましい勢いでした。
最初は、その声の大きさに対する、臍曲がりの反発でしたが、
何時まで経っても、
伝統とは何たるかを説きもせず、
只管「伝統」を強弁する論議に、好奇心さえ萎える思いでした。
あの頃、正論誌の読者論文で優秀賞となった女子大生論文は、
確か、伝統とはイタダキマスと同じだとありました。
皇統の根拠が「イタダキマス」とは、到底頂けません。
皇統が、男系で継続してきた事は、今や世界が認める事実でしょう。
しかし「男系」に価値ありと言うならば、
中国や韓国の家系は、古来、須く、男系だとかーーーー。
少なくとも、中国や韓国の人達に、
「男系継続は価値ある伝統なんです」と大見得切って見せるのは、
アメリカで「私、英語出来る。」と肩張って見せるのと、
同じ程のバカバカしさの様に思えます。
これは、中韓文化の風下に立つ等と言うお話では無く、
単なる幼稚さの問題です。
正論別冊14号は、今、一所懸命、そうしてるみたいです。
その昔、禅に精進するさる人から、
伝統とは、振り切った盃に、尚残る一滴だと聞いた記憶があります。
イタダキマスとか、Y染色体とか、単に継続したと言う事実では無く、
生の人間達の凝縮された情念、想念をさし措いては成り立たないものの様に思うのです。
それは、神話に垣間見える、
民族の足跡に垣間見える、
他ならぬ天皇の歴史に垣間見える、
民族の想念だろうと思う訳です。
それが「男系」なるものとはどうしても思えないのです。
思うに、よしのり氏は、
その道を辿り、天皇への「恋けつ」に辿りついたのでしょう。
その情念のゆえに、共感するものです。
古代、推古から称徳の200年弱の間の女帝の時代に対する感性には同感です。
男系論が、女帝が中継ぎに過ぎずと断定するなら、それでも良いでしょう。
それなら、女帝なれど「男系」なり等と強弁する必要も無い様に思います。
所詮Y染色体とやらは女帝にはない訳ですから。
私は、
天武妃が、天武を継いで41代持統天皇となって以降、
48代称徳天皇までは、
男系や女系などと言う話ではなく、
持統の子、草壁皇子を巡って行われた
持統系の歴史だと思っています。
今、ふと気付きました。
庶民から皇宮に入られた皇后美智子妃の、
忍耐、節度、自己犠牲、教養、
その全人格的高貴さ、
自立し、明確な個性を持たれるという意味で、
古代女帝の時代と重なります。
皇后に選ばれ得る日本女性の伝統的美徳は、
尚、健在です。
男系論は、
女帝は、配偶者に恵まれず、
青い目や、金髪の皇族が出現する等と、
大和撫子に匹敵する男性は、旧宮家以外、
日本には存在する筈もないと、
そう主張しているようです。
戦後廃止された11宮家に対する強烈なよしのり批判、
例えば宮中某重大事件に関った久邇宮家の、エゴと傲岸が、細部まで事実かどうかは知りませんが、
もし事実なら、宮家なるものの資質についても目を向けるべきかも知れません。
少なくとも、男系論が、「伝統」を強弁しながら、
「親王より5世は皇親に非ず」と言う、
明治典範まで千数百年続いた掟を無視して、
現皇太子からは50世以上も離れてしまった、11宮家を皇親とする主張の
いい加減さは、到底理解出来ません。
但し、よしのりさんの長子優先には、
その展開する理由に異議ありです。
氏は、長子優先の理由に、
●直系が伝統。
●傍系を含む男子優先では、皇男子の誕生まで、帝王教育の当事者が決まらない。
●典範は皇太子とは「皇嗣たる皇男子」とされており、皇太子不在の状態が発生する。
と言います。
直系は、皇位にある天皇の希ではあったでしょう、でも直系継承ばかりでなかったことは系譜から明らかです。
氏が参考書として揚げる瀧波貞子氏の「女性天皇」には、ある時期、兄弟相承であったと書かれています。
帝王教育の利便の為と強調すると、傍系に広がる「皇位継承順位」すら否定しかねません。
皇太子不在は、制度の設計、運用と言う、まさに今後修正すべき方法論です。
よしのり氏は
昭和天皇が、男子に恵まれなかった頃、養子を考慮されたと紹介しつつ、
それは、あの時代の特性の故だと解説します。
「あの時代」は、どうして「今の時代」ではないのでしょう?
昭和天皇の御憂慮は、何故、皇統を通じての御憂慮では無いのでしょう?
万世一系に非ず、万葉一統である。
とは深遠な真理の様です。
直系長子と唯一人の狭い道を設計することなく、
傍系の範囲は制限する必要はあるでしょう、例えば、親王より四世内とかーーー
その範囲で、男子優先女系容認と、
大河の如き、万葉一統は如何でしょう?
女性宮家創設即刻考えるべきと思います、
更に「譲位」なる制度も復活すれば?
と思いますが?
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コメント
「大河の如き、万葉一統」いいですね。
よしりん先生が読んだら、どんな感想を持たれるでしょうか。
『天皇論』『昭和天皇論』も機会がありましたら是非!
投稿: と | 2011年6月 4日 (土曜日) 01時45分